顔面骨骨折・顔面外傷

顔面は露出部であるため交通事故・殴打・転倒・スポーツなどにより受傷しやすい部位になります。一方、顔面は社会生活を営む上で、非常に重要なパーツの一つです。そのため、整容面にも配慮した適切な治療を行うことが、非常に重要となります。
当科では、顔面骨骨折や軟部組織損傷など顔面外傷に対して、機能性・整容性に配慮した治療を行っています。診断は、問診・診察・画像検査(レントゲン、CTなど)により行います。顔面骨骨折では、複数の合併損傷をきたすことがあるため、骨折の部位や症状によっては耳鼻咽喉科・脳神経外科・眼科・口腔外科などと協力して治療を行うことがあります。

主な顔面骨骨折

骨折により、鼻の形態が変形します。手術の適応は、変形の程度によります。新鮮な鼻骨骨折では、皮膚切開せず、整復鉗子を用いて鼻腔内より折れ曲がった骨を元に戻します。手術では、局所麻酔では整復が不十分になる可能性があるため、通常全身麻酔で行っています。術後は1週間鼻腔内にガーゼでできた鼻栓を挿入(内固定)、2週間のギプス固定(外固定)を行います。

頬骨骨折

骨折により、頬部の平坦化など顔面形態の変形をきたします。また開口障害(口が開けづらい)、頬部の知覚障害(頬から上唇のしびれ)、複視(物が二重に見える)などの症状が生じます。骨片の転位が軽度で骨折による症状もほとんど認めない場合には手術を必要としませんが、変形が強い場合や障害が重度であれば手術による整復が必要となります。手術では、骨折によって変位した骨を元の位置に戻したのちに、プレート(チタン性あるいは吸収性)で固定します。

眼窩骨折

頬骨骨折などに合併するものの他に、眼部にボールや肘・膝などがあたって眼球の周囲にある薄い骨が折れる骨折です。症状として眼球運動制限、複視、眼球陥凹、頬部の知覚異常を生じます。手術は、骨折部に陥没した眼窩内容を元の位置に戻し、骨欠損が生じた場合、骨あるいは人工材料を用いて眼窩壁再建を行います。

陳旧性顔面骨骨折

鼻骨骨折後の変形(鼻の曲がり)、頬骨骨折後の変形(頬部の変形)、眼窩骨折後の眼球陥凹に対しても治療を行っています。受傷後数か月が経過した顔面骨骨折では、ずれたまま癒合した骨を整復するため骨を切って動かす必要があります。

前頭骨骨折・鼻篩骨骨折・頬骨骨折・上顎骨骨折・下顎骨折では、全身麻酔下で皮膚切開し手術を行います。切開部位、箇所は骨折部位やその程度などから考慮し、可能な限り傷跡が残りにくい切開線となるよう配慮しています。手術により骨折部を整復し、骨癒合が得られるまでずれないようプレート固定を行います。以前は、抜去を要することもあるチタンプレートが使用されていましたが、近年では吸収性プレートの開発により、症例に応じて吸収性プレートの採用例が増えています。また骨折部は受傷2週間以上が経過した顔面骨骨折では、骨が癒合し整復が難しくなり、骨切り手術が必要となることがあるため、受傷後早期の受診、治療が重要です。